静岡県富士山世界遺産センターがオープンしました

 「けんせつ静岡 第268号」に掲載された「わが街ウオッチング」 「『富士山世界遺産センター』建設現場を訪ねる」では、建設中の建物の技術的な事にスポットを当てて取材して来ましたが、平成29年12月23日の開館を直前に控え、今回は施設の展示内容等も含めて報告致します。

取材日 平成29年11月10日(一部写真は後日撮り直しております)

施設名称:静岡県富士山世界遺産センター

敷地面積:7,000平方メートル
延床面積:約3,411平方メートル

開館日 2017年12月23日

所在地は富士宮駅から西へ徒歩10分、浅間大社の南側、神田川の西側、JR身延線の北側になります。
施設の概要は、富士山世界遺産に関する包括的な保存管理の拠点であり、富士山の自然、歴史、文化に加え、周辺観光などの情報提供をしていく施設です。


展示棟のガラス・カーテンウオール内はビジターセンターとして利用されるので入場無料。

館内のアトラクションとして、展示棟内部のスロープを上がって疑似登山体験をする場合にのみ300円が必要と成ります。
施設は、北棟と西棟、展示棟の3つに分かれており、北棟と西棟は2階建て、展示棟が5階建ての構造になります。
これら3つの棟が、ガラスのカーテンウオールでつながっています。

施設の駐車場となる「神田川観光駐車場」からメインエントランスに行くためには敷地南側の鳥居をくぐって、左回りに水盤を回っていくことになります。

鳥居をくぐらなくても神田川の側道からエントランスに行けるような動線もあります。
水深3センチの水盤の西側に建物を配置してあり、水面に映った展示棟の姿を外部から楽しめるようにしてあります。逆さ富士の形をしている展示棟が水面に映ると........



水盤に張られた水は、この場所の地下から湧き出た富士山からの湧水で、水温は年間を通じて摂氏14度前後。冬は外気より温かく、夏は外気より冷たいので水冷チラーを用いて熱交換し、館内の空調に使用してから二次利用として水盤に引き込まれています。

水盤の水は面積的に半分ずつ抜くことが可能で、地域のイベント時など多用途に利用することも可能とのこと。
風の穏やかな夜に撮影しました。
展示棟の木格子が水盤に写り、幻想的な姿を見ることが出来ます。




写真提供
佐野写真館・佐野雅則
1階メインエントランスを入った空間は、ガイダンス展示となっており、世界遺産富士山の構成資産と、周辺施設などが紹介されています。

奥に行くとミュージアムショップやカフェがあります。
ガラスのカーテンウオールに囲まれた展示棟内は、吹き抜け構造の大空間と成っており、四方から光が差し込み気持ちの良い空間と成っています。
逆円錐形の展示棟は下からスロープで登りながら、擬似的に富士登山が楽しめるように作られています。

入口を進んでみましょう!


スロープは逆円錐形の展示棟内壁に沿って左巻きにカーブしており、矢印に従い外周側に沿って(右側通行)進んでいきます。
それでは擬似的に富士登山の体験をしてみましょう!

入口周辺は明るいのですが................  奥に進むと暗くなって........ スロープ外周部は上に向かって外側に傾いており........
壁面には富士山の登った標高に合わせた映像が映し出され........ 回廊は一部吹き抜けに成っており、上の登山者が見えるように成っています 雲の上に出たようです。
森林限界を超え........ 眼下に広がる雲海を眺めながら........ 映像の中の登山者と一緒に登ります
高度は増していき........ 光が見えてきました!頂上はもうすぐです
頂上にはピクチャーウインドウと呼ばれる開口を設けて、富士山の借景が楽しめます。
5階常設展示室:タイトル「荒ぶる山」

屋上には富士山の溶岩が敷き詰められています。
この施設の動線としては、まずは展示棟内部の1階から5階まで、スロープを登山道に見立てて登りながら擬似登山体験をし、頂上で本物の富士山を見て休憩。

下る時には、右巻きのスロープをカーブ内側に沿って歩いて行くと、建物の中心方向にとなる右手にフロア毎の常設展示室が現れ、下りながら展示を見ていただく形となっています。

4階・常設展示室「聖なる山」
3階・常設展示室「美しき山」

3階はブリッジで展示棟・西棟・北棟がつながっているのですが、ここはいわゆる西棟の屋上に成ります。
屋上なのですが、建物の一部がガラスのカーテンウオールに突っ込む形で囲われているので、屋上なんですが室内になっていて、常設展示室となっています。

西棟・展示内容:「育む山」


壁の富士山は、大河ドラマ「真田丸」の題字を手がけ、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で知られる、左官職人「挾土 秀平」(はさど しゅうへい)作
北棟の屋上は1Fから続く吹き抜けの大空間と成っており、ここからも実際の富士山が眺望できます。


北棟・展示内容:「受け継ぐ山」
北棟は屋外展示で外に出られるようになっており、富士塚を展示。

この富士塚も左官職人「挾土 秀平」(はさど しゅうへい)作となっています。
2階もブリッジで展示棟・西棟・北棟がつながっています。

北棟2階は映像シアターで265インチの4Kシアターになっています。

シアターの波打つ天井は「紙管」で表現されています。



北棟の1階はライブラリーとなっています。

写真紹介の漏れた西棟には他にも、1階の研修室では修学旅行生などの受け入れを行います。西棟に設置された収蔵庫には、富士山絵画等の文化財を展示する為に一定の温度と湿度を保てるような設備と成っており、1階搬入室は所蔵品を積んだ車両ごと入れるような構造として、外部と遮断した状態で荷下ろしをし、EVホールで荷分けして1階の収蔵庫や、直接エレベーターを使って2階の企画展示室にも搬入出来るような構造と成っています。

この建物で特に特徴的な木格子については、設計仕上がり寸法は120角のヒノキですが、ガラスの外と中では仕上がりが違っています。
外部の木格子に関してはムク材で、超対候性撥水剤2回塗り仕上げ。

逆円錐は平面的に見ると、上に上がるにつれ円から楕円形に広がっていくので、円錐形と表現はしていますが厳密には円錐じゃないんです。曲面がねじれて広がっていくので部材も曲がってねじれていきます。その為140角の角材から、3次元的に曲がってねじれている120角の角材を、コンピューター制御の全自動3次元プレカットで削り出して作成。

内部の木格子は内装材なので不燃が要求されるので、90角の角材の4面に不燃注入を施した厚み30の板材を貼り、150角の角材を母材から、120角の角材を削り出して作成されています。

すべての木格子部材は、コンピューター制御の全自動3次元プレカット。木格子の部材は全部で約8000ピースあり、1ピースずつすべて形状が違うので、1ピースずつパズルのように現場で組み合わせたそうです。

現物を施工する前に、現場でモックアップ作成を行い、組み方、留め方、塗装、施工性の検証をしたうえで、3センチ×4センチのガイド材を用いて、位置決めをしてから下地の鉄骨に固定されています。

材料は全て静岡県産材の富士ひのきを使用しています。



木格子は複雑な曲線を描いて広がっていく。
外部は夜に成るとライトアップされ、通常時は電球色でライトアップされますが、定時で色を変えたり、季節によって見せ方が変わります。
通常時は電球色にライトアップ
上は計画段階のパース

下は夜間に撮影した実物の写真です

写真提供  佐野写真館・佐野雅則

静岡県富士世界遺産センター地図