国土交通省は1月31日、国際クルーズ拠点に清水港など6港を選定。訪日クルーズ客の急増を踏まえ、官民が連携して大型船が寄港できる岸壁や旅客ターミナルビルを整備する方針です。
 拠点指定に湧く清水港ですが、クルーズ船寄港までには、誘致活動をはじめとした数々の“仕掛け”があったことは、容易に想像できます。
 清水港客船誘致委員会を立ち上げ、現在も会長を務めている望月薫氏(アオキトランス株式会社代表取締役会長、静岡市清水区)に、誘致を始めたきっかけや、ご苦労、港の整備に望むこと、今後の清水港の在り方などをお聞きしました。
(聞き手:静岡県建設業協会総務・広報委員会 佐野茂樹委員長、同 加藤直樹委員)

委員 大型客船の寄港誘致を始めた動機、きっかけからお聞きします。

局長 清水港は、長い間、物流の港でした。そのような中、1990年に「クイーン・エリザベス2」が入港したのですが、とても多くの人が見学に訪れました。
 華のある船が寄港し、にぎわいのある港づくりができないか、その思い一心で、客船誘致委員会を発足。誘致活動に取り組み始めたいと考えました。
 ところが、当時は客船誘致などを考えてくれる協力者が、なかなか見つかりませんでした。今では誰もが知っている「飛鳥」さえ1991年11月の竣工ですから無理もなかったのですが。

 そこで、まずは帆船誘致から取り組み始めました。帆船の入港は毎年実績を重ねることができ、富士山をきれいに見ることのできる11月の公開訓練は、清水港の風物詩となったわけです。

佐野委員長
▲佐野委員長

委員 富士山の世界文化遺産登録は2013年でしたね。

局長  富士山の世界文化遺産登録前は、日本の他の港では、中国経済が好調だったこともあり、中国の観光客がクルーズで訪れ始めましたが、清水にはなかなか船が入ってきませんでした。「観光地・清水」は、外国人へのインパクトが強くなかったからでしょう。
 国内外の船会社に対して、委員会は粘り強く誘致活動を続けました。
 「クリスタル・クルーズ」は当時、日本郵船が所有していましたが、5年がかりで入港を誘致しました。清水港での歓迎と、もてなしが良かったとの評価をいただき、それをきっかけにコネクションができました。船会社は米国マイアミに集中していることもあり、今でもマイアミには足を運んでいます。
 このように、25年の積み重ねがマーケットに受け入れられ、そこに、世界文化遺産登録を携えた富士山が付加価値となったと考えています。

「ノーティカ 2016年3月18日入港」(写真/清水港客船誘致委員会提供)
▲「ノーティカ 2016年3月18日入港」
(写真/清水港客船誘致委員会提供)
にっぽん丸
▲にっぽん丸

委員 船会社への誘致活動以外に、力を入れたことは何ですか。

局長  やはり、1990年のことですが、「船がこないのなら、乗船する人を作り出そう」ということになり、「クルージングを楽しむ会」を立ち上げました。
 お客さんには清水発の船、クルージングとは何かを体験してもらい、船会社には清水にもマーケットがあると認識してもらうことが狙いです。
 ちょうど横浜ベイブリッジが前年の1989年に開通していましたので、「にっぽん丸」をチャーターし、清水発横浜ベイブリッジのクルーズを企画。1日で申し込み定員に達しました。

委員 クルージングや船旅は魅力的ですものね。

局長  同じころ、船会社が、それぞれクルージングを楽しむ会などを立ち上げました。クルージングや船旅は、食事や音楽、ティータイム、ゲーム、ショーな ど、いろいろ楽しめる。1日ではもったいない、魅力を満喫できないほどです。
 その後、クルージングマーケットが広がり、今まで神戸港や横浜港だけの寄港が、他の都市にも行ってみたい、大きな富士山も見てみたいなどの理由から、清水が選ばれ始めました。

「ル・ソレアル」2016年4月2日入港(写真/清水港客船誘致委員会提供)
▲「ル・ソレアル」2016年4月2日入港
(写真/清水港客船誘致委員会提供)

委員 1999年には清水港開港100周年の記念行事が開かれましたね。

局長 清水港開港100周年の記念式典では、日本の帆船8隻が一堂に入港しました。4日間で約100万人が訪れ、岸壁が人で埋め尽くされ、歩くことができないほどでした。
 ライトアップも行い、夜10時まで見学者を受け入れたこともありますが、帆船にはマニアがいて、セイルドリルなど、とても人気があります。客船とは違う魅力があるわけです。
 8隻の入港はインパクトがあり、訪問者の車両ナンバーも全国各地さまざまで、それを見て手応えを強く感じたことを覚えています。

委員 清水港のハード整備については、どうお考えですか。

局長 クルーズ客船が寄港する日の出埠頭は、水深12㍍の岸壁があります。多くの客船は水深10㍍程度で大丈夫ですが、綱取りの係船柱(けいせんちゅう)が小さく、11万3000㌧の船までしか受け入れられませんでした。
 しかし、国土交通省中部地方整備局清水港湾事務所が、2016年夏から大型船に対応できる1.4㍍の係船柱を6基設置しています。これで、22万㌧級(乗客約5400人)の船が係留できます。3月中に完成、4月供用開始の予定です。
 岸壁だけではなく、後背地整備も必要になってきます。自治体との連携や、港と観光関連がスクラムを組むことも大切だと考えます。
 静岡県は、4号上屋、5号上屋の機能を新興津へと移転させ、6号上屋はターミナル機能を持たせると聞いています。
 ターミナルを整備し、「CIQ」(税関・Customs、出入国管理・Immigration、検疫・Quarantine)、国境を越える交通、物流に必要であるとされる手続きができるようになればと。つまり「入出国ができる港」というわけです。
 外国人の観光客を招くには、他の港を経由するとコストがかかりますし、ファーストポートで入れるようになると、外資が入ってくることにもなります。

「アルタリア」2016年3月14日入港(写真/清水港客船誘致委員会提供)
▲「アルタリア」2016年3月14日入港
(写真/清水港客船誘致委員会提供)
加藤委員
▲加藤委員

委員 インバウンドに期待、ということですね。

局長 国を挙げて、観光立国へシフトする中、2020年までに4000万人、そのうち500万人はクルーズという目標数値です。
 そのような中、清水都心ウオーターフロント地区開発基本方針を策定していますが、再開発のスタートと捉えるべきでしょう。
 海洋文化の拠点の創出、港と同時に都市の開発をしていく、そういうプロジェクトであってほしいと思います。
 港は駅と同じで、観光客は行きたい場所があれば、その港を利用します。「来て」「見て」「買い物をして」「食べて」「楽しんで」もらう港に発展しなければいけません。富士山は、いつでもウエルカムと迎えてくれていますから。

委員 先日、観光客の英語で話しかけられました。恥ずかしい話ですが、案内が英語で応えられず、駅まで送っていったことがありました。

局長 観光の文化や、観光の環境づくりが必要ですね。ひとつ事例を挙げると、案内表示を見ても分かるように、多言語化されていません。国際化、インターナショナルな観光地なりの整備が必要です。
 外国人が自由に散策できるようにしなければいけないのでしょう。
 港が整備された、船は入港する、その後は…。訪れた人々が、どこでお金を使ってくれるのか、経済効果や波及効果を論じるには、やはり基本的な観光地としての整備が大切になります。
 しかし、買い物だけでは物足りないことになります。自然を感じ、神社仏閣を見る、工場見学など、観光も体験型に変わりつつあります。もしかしたら、なんでも観光になる、のかも知れません。どこが、だれが仕掛けるか、率先してやるのか、ということですね。

委員 静岡県内の港については、どのようにお考えですか。

局長 下田や御前崎、田子の浦など港によって状況は、さまざま。背後地の資産や魅力が違うので、各港に合った方法があると思います。しかし、大切なことは駿河湾全体で広域的に捉えていくことだと思います。今後、連絡協議会などができあがっていくのではないでしょうか。
 そして、中部横断自動車道が全線開通したのちは、山梨県、長野県も活用しながら、新しいツーリズムも作っていかないといけません。交流人口拡大による経済効果や、国際交流のステータスが上がることで、いろいろな面で相乗効果が出てくると思います。

インタビューを終えて・・
▲インタビューを終えて・・

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