出会いのひろば

平成26年度専門高校教諭と建設業協会との意見交換会

日時平成26年11月14日(金) 10:00~12:00
場所静岡県建設業会館4階会議室

1 入学時の専攻決定及び入学後の専攻変更について

発言者 内     容
青木教諭
(浜松工業)
 全日制では、入学試験時に第3希望まで聞いて、だいたいは第1希望となるものの、場合によっては定員割れをした学科など第2希望、第3希望に回るケースがある。
 建築系は入学時に希望している生徒は多いが、年度が進むと他業種へ進みたいという生徒も出てしまう。土木系は、運動の好きな生徒が学習していく中で興味を持つ生徒がある。
水野教諭
(富岳館)
 総合学科で2年進級時に系列を選択する。入学時から進みたい系列(コース)が決まっている生徒もいれば、1年時に体験学習をした中で選択する生徒もいる。
鈴木委員長  リクルートの調査結果によると、大卒・大学院を卒業する土木・建築系の学生は全国で約5万人。全国に50万社以上の建設会社が存在するため、競争率が高い。
 特に、静岡県内には土木・建築系の学科を持った大学がないため、高校生の入職を希望する傾向がある。高校向けアンケートの結果では、進学する生徒が約半数で、就職する生徒の半分が他産業、建設業へ進む生徒が25%程度というのが実態であり、何とか歯止めを掛けたいというところ。
田中校長
(科学技術)
 高校向けアンケートでは、平成25年度は建設会社へ進む生徒が増えたという結果が出ておりましたが、これまで建設業への就職を希望していたものの求人が少ないという状況により進路変更せざるを得ない生徒もいたと思う。

2 女子生徒の状況とPRについて

発言者 内     容
太田教諭
(天竜)
 今年の3年生で女子は4名。今年から総合学科となり建築科系列の枠が20名ほどに縮小された。その中で、今年の1年生は女子がいない状況。進路についての話で女子が敬遠してしまう
 学校自体は二俣高校との統合もあり女子生徒は多いが、建築に女子は向かないという印象を持たれている。女子の建設業界への受け入れは、どのような職種があって、どのような方向性で育成していきたいと考えているか教えてほしい。
櫻井教諭
(磐田農業)
 環境科学科の定員は40名で、造園と土木を教えている。今の3年生までは、2年進級時に、造園か土木で選考を選択しており、3年生で土木を選択しているのは18名で、その中で女子は4名であるが、進路先で土木はない。
 今の2年生からはこれまでのコース制ではなく、40名全員が土木、造園を勉強するようになっている。ただ、土木系のインターンシップは男子生徒が15名経験しているが、女子はどちらかというと造園に行っている現状。
渡邉教諭
(沼津工業)
 女子生徒は、今年の1年生で14名、2年生で6名、3年生が5名。昨年度の卒業生には5名女子がいたが、女子に対する求人が少ないこともある上、2年進級時に振り分けられた形で建築科に入り専門学校へ進んだ生徒もいた。
 ただ、現場よりも内勤を希望するため、現場監督や設計を希望し、1名が地元の工務店に設計で就職。また、土木系の会社にも1名が事務で就職している。インターンシップの現場などで女性の監督者がいればPRにもなると思うので、協力いただければと思う。
鈴木委員長  女子生徒限定の説明会については、どう考えているか。
坂本教諭
(科学技術)
 是非とも機会を設けていただければと思う。都市基盤工学科では、1年生に7名、2年生に6名、3年生に1名で14名の女子生徒がおり、建設業への関心も高く、3年生の生徒は公務員の土木職を目指している。2年生の内5名は測量競技の東海大会に選手として出場する。
 これまでは他業種へ進む生徒が多かったが、変わってきている。建産連イベントでも、卒業生がオペレーターとして参加した。提案いただいた説明会を開催していただければと思う。
岩辺教諭
(科学技術)
 建築デザイン科では、女子生徒が毎年15名前後で半数近くを占める傾向がある。また、女子生徒が男子生徒に比べても受験での合格率が高い傾向にあり、期待している部分もある。
 今年の3年生は16名の女子生徒の内6名が就職したが、CADでの採用が3名、内装系の現場が1名、事務系が2名で、建設系に興味があった。
 うまく採用を考えてもらえば働ける生徒がいると思うので、説明会を開いてもらえるとありがたい。
鈴木委員長学校により事情も異なってくると思うので、事務局を中心にアンケート等の調査を行い、対応について委員会等で考えていかなければと思う。
大石委員
 (島田)
 今年、藤枝の女子高(普通科)の生徒が先生を通じて会社訪問を希望してきたので、見学させた。本人もしっかりしており、選考の結果、採用した。普通高校でも女子生徒に声を掛ければ集まる可能性もあるのかと思った。

3 中学3年生へのPRについて

発言者内     容
鈴木教諭
(伊豆総合)
 学校行事としてオープンスクールや文化祭等を通じて案内はしている。また、中学校訪問で卒業生が実習の内容など今やっている事のアピールをするものの、担当の先生が、アピール内容よりも、どうしたら入学できるかという事を伺ってきた。
 本校では定員割れをする学科があり、工業科としてもPRを重要視しているが、中学校側の求めている事とのギャップがある。
川口教諭
(島田工業)
 今年度の入学者が定員割れをしたこともあり、年3回中学校を訪問した他、文化祭、オープンスクール、体験入学では各科でPRを行っている。
 また、六合中学で「島工サイエンススクール」として3年生を対象に1時間分の授業を行い、今年は3D-CADのPRを行った。都市工学科の話をすると、建設作業員になるイメージを持たれており、施工管理や現場監督をする話をすると驚かれるので、PRも必要かと思われる。
太田教諭
(天竜)
 専門高校と協会でという話は良いと思う。
 現在、大工組合に誘われ浜松工業と合同で組合のイベントに出てPRを行っている。過去には浜松産業展示館での住まい博に浜工や専門学校、大学等が集まりPRをした。また、まちづくりセンターで卒業設計等を展示させてもらったこともある。一般者向けのイベントではあるが来場者が多く良い機会になったと考えている。
鈴木委員長  この件についても、地域ごとの事情も異なるかと思われるので、全県下でやるか地区でやるか各高校とも協議した上で進めていきたいと思う。その際には協力をお願いする。

4 生徒の状況について

発言者内     容
鈴木委員長  高校生への求人について、1社単位での求人は駄目で、ハローワークを通じての求人でなければならないという話を聞いたことがあるが、実際どうなのか。
渡邉教諭
(沼津工業)
 インターンシップで受け入れてくれた企業からの求人票があれば生徒を受けさせるが、無ければこちらからお願いをしに行くので、生徒は求人票を第一に確認して、行きたいところがあれば見学をして希望を出す流れとなる。
 効果的な求人については、給料、休日、手当に目が行ってしまうのが現状で、建設業へ就職しても他産業に就職した友人と再会した時に、給料の違いを受け離職してしまう卒業生もいた。
鈴木委員長  東海四県ブロック会議での国交省からの説明では、建設業の平均賃金は製造業に比べても10%ほど低いということ。なんとか平成9年度程度の水準に戻せるよう要望しているところだが、給与水準が低いのが現状となっている。
坂本教諭
(科学技術)
 3年生の進路が一段落したこともあり、先日2年生向けの進路学習を行い、企業研究という事で今年の求人状況一覧を見せ、関心のある企業を第3希望まで挙げて調べさせた。
 先ほど沼工の渡邉先生がおっしゃった事に加え、賞与も重視している印象だった。実際に求人票を見ることで心が動いてしまう生徒がいるのも現状である。
鈴木委員長  先輩の活躍について記載された欄もあるかと思いますが、いかがでしょうか。
坂本教諭
(科学技術)
 部活の繋がりで先輩の就職先を選ぶケースもあるので、影響力はあると思う。
櫻井教諭
(磐田農業)
 他校に比べると土木系に関わる生徒が少なく、求人も限られてくるので、求人を増やしてほしい部分もあるが、それに応えられるかという不安もある。インターンシップの受け入れ企業でも大卒者を優先する企業もある。
田中校長
(科学技術)
 学校側の求人票の受付は7月1日からスタートし、求人の試験が9月16日からスタートしてくるが、以前聞いたところで、建設系の求人がだいぶ遅いのではないかという話があったが、企業の現状はどうか。
鈴木委員長 3月決算の会社が多く4月から事業年度がスタートするので、その時点では採用計画は決定していると思う。
大石委員
(島田)
公共事業もあり、国や県などがどの程度発注するのか見通しが立たないと計画が立てられないこともある。
鈴木委員長  求人を出してハローワークを通じるのが基本だと思うが、逆にハローワークを通さない求人はあるのか。
渡邉教諭
(沼津工業)
縁故採用などの場合がある。基本はハローワークを通す。

5 インターンシップについて

発言者内     容
鈴木教諭
(伊豆総合)
 三島協会の11社にお世話になった。事前研修として、生徒に会社へのアポ取りをさせ研修内容の打合せをするようにしている。
 また、実習現場のその後経過について見れる機会を設けてもらえるのであればありがたい。
青木教諭
(浜松工業)
 参加した生徒にとって現場を体験できたことはとても重要な機会になり、そこからものづくりに携わりたいという意識の向上につながっていると思う。
 事前の活動については、生徒から担当者にアポ取りをするようにしているが、なかなか現場に出ている担当者との連絡がつかず、限られた時間の中で準備を進めていくことで社会人としての生活を感じることもできる良い機会となったのではないかと感じている。
鈴木委員長  事前の準備について、各校でそれぞれ考えていただけていると思いました。フォローアップとして、現場のその後の報告など、委員会を通じて提言していければと思う。

6 その他・感想

発言者内     容
太田教諭
(天竜)
 生徒の気質として大人しい生徒がなかなか評価されないことがある。コミュニケーションに対する不安もあるかもしれないが、良い生徒も多くいるので配慮いただけるとありがたい。
青木教諭
(浜松工業)
 定時制で建築専攻という教室を開いており、高卒者以上を対象に2年間建築を学ぶコースがあり現在11名が学んでいる。先ほど、藤枝の高校生の話もあったが、普通高校出身者でもCADの専門学校を通い建設系に住宅関連会社や設計事務所に勤務し、建築士の資格を持っていないという事で来た生徒もいる。2年間、夕方18時半から21時半まで、企業の方の協力もあり二級建築士の受験を目指して開始した平成20年度以降学科で6割、二級建築士で4割の合格がある。ここ数年は、工業高校の他学科を卒業した人が入ってくる生徒もいる。専門学校に比べ1割以下の学費で学べるので、機会があれば紹介等いただければと思う。
櫻井教諭
(磐田農業)
 袋井協会にはインターンシップでお世話になり、2月には現場見学会も予定している。インターンシップでは、受入企業にも負担を掛ける中実施いただき感謝している。事後の見学ができればと思うが負担のない範囲でご検討いただければと思う。
 また、本校では設計や施工の実習が2年生から行っており、専門的な知識として厳しい部分もあるが企業と協力してやっていければと思う。
川口教諭
(島田工業)
 インターンシップの希望者が少ない現状で、他業種のインターンシップに行く生徒もいるが、参加した生徒の意識は高い。
 女子生徒については、昨年3年生の生徒を担当していたが、建設業へ進んだ生徒はいなかったが、建設業や現場で働きたい意欲のある生徒はおり、転職を希望している生徒もいる。また、本年度の3年生では女子が2名おり、1名が建設業へ内定している。
坂本教諭
(科学技術)
 インターンシップでは、2年前から都市基盤工学科の2年生全員を参加させている。受入先として、静岡協会、清水協会のほか、国、県、市鉄筋業組合など21ヶ所にお願いしている。また、夏休みには静岡協会の協力をいただき東日本大震災被災地へのボランティア活動、科学館「るくる」でのアーチ橋づくり、建産連行事、小学校への出張授業などを企画し、生徒の意欲・関心を高めていくことを考えている。今後も、いろいろな機会で実施していければと思う。
岩辺教諭
(科学技術)
 建築デザイン科は女子が多く、2年生での就職希望者も多い。女子の求人を考えていただけるとありがたい。学校としては、入り口にあたる受験者の確保、そして出口にあたる部分で進学が増えているが心配もある。県内にUターンして就職する生徒が多いので、企業には是非「人を育てる」という観点で見ていただければと思う。
水野教諭
(富岳館)
 農業高校から総合高校に変わって以降、学校としてのインターンシップは行ってきたが、学科独自としては実施してこなかった。今年度から富士協会の協力をいただき6社7現場へ13名の生徒がインターンシップに参加。6月には、29名の生徒全員で学外研修として土木1現場、建築2現場の見学を行った。
 他産業へ流れてしまう生徒がいる中で、建設を希望する生徒を最後まであきらめさせないという思いがあり、インターンシップを経験した生徒が授業や実習で自信を持って臨めるようになっている。
 来年度も実施をお願いできればと思う。
渡邉教諭
(沼津工業)
 インターンシップについて、事前指導はこれまで沼津協会に丸投げ状態で、沼津協会の副会長が学校へ講話をしに来ていただき、受入先へ連れて行ってもらう形で行ってきたが、事前指導ができればと考えているので沼津協会とも打ち合わせをしていければと思っている。
 科学技術高校では、建築希望者が多いという話をされていたが、東部では中学生が興味があるのは電子関係で土木・建築への希望者が少ない。これまで、製図を中心とした指導で大変というイメージを持たれていた部分があり、2~3年前から実習をメインに変えてきたこともあってか、今年の1年生はかなり希望者が増えてきているので、この状況を続けられるよう考えていきたい。中学校にも建設業界でやっていること、そのために工業高校でやっていることを伝えれば興味も増していくのではないかと思う。2月には沼津市内の中学生を対象に建築科独自の呼び掛けをしていこうと企画している。東部地域の周辺の学校にも呼びかけていこうと考えているので、建設業協会にも協力をいだたけるとありがたい。
鈴木教諭
(伊豆総合)
 女子生徒の状況は、3年生の建築デザイン科に女子が9名いるが、4人が進学、5人が就職となっており、進学予定の4名でも工学系は1人のみ。また、総合学科で選択授業の影響で看護系へ進む生徒もおり、女性生徒を対象とした説明会などが実現できればと考えている。
中村理事
(浜松)
 意見交換会ながら一方的に先生方の話を聞いてしまう形となり、先生方にも聞きたかった部分もあったかと思う。当社では長い間高卒者を採用していなかったが、来年度は浜松工業より採用することとなった。
 企業としては、どうしても優秀な生徒をほしがるもので、大人しい生徒であってもやることをやる、言う事を言うのも必要である。建設論文の一次審査をやっていると、このレベルではと思ってしまう生徒がいる反面、非常に優秀な生徒もいる。無責任な部分もあるかもしれないが、優秀な生徒を育ててほしいという思いが我々としてもあるので、会合を通じて話していくことが重要かと思う。せっかく育てていただいた生徒が土木・建築以外の道へ進んでしまうのは残念極まりない。
 また、今日の内容は技術者に関するものが中心だったが、我々は技能労働者も求めている。決して低い地位ではないので、そのような人間も育てていただけるとありがたい。