一般社団法人静岡県建設業協会の取組を紹介します

 一般社団法人静岡県建設業協会では、建設業における人材確保事業の一環として、県内公私立高等学校と専門校等の在校生の方を対象に、建設論文の募集事業に取組んでいます。

 第33回目を迎えた平成25年度のテーマは『私の街の未来をつくる』。自分の住む街をどのような街にしたいですか?街の未来に何が必要だと思いますか?

 厳正なる審査の結果、応募416作品の中から24作品が入賞、今回から創設された静岡県知事賞に、静岡県立科学技術高校の浅井英光さんが受賞されました。

 また、優秀賞に3名、佳作に5名、努力賞に15名が選ばれるとともに、論文応募に協力していただいた高校4校に感謝状が贈られました。

 表彰は、平成26年1月22日から受賞者の所属する学校にて順次行われました。

第33回建設論文

 受賞者と感謝状贈呈校は次のとおりです。

(敬称略)学年は表彰式時

県知事賞
 浅井 英光(県立科学技術高等学校建築デザイン科2年)

優 秀 賞
 岩井 理紗(県立沼津工業高等学校建築科3年)
 小澤 千尋(県立沼津工業高等学校建築科2年)
 伊東 優真(県立沼津工業高等学校建築科2年)

佳  作
 川口 千佳(県立沼津工業高等学校建築科3年)
 北野 青葉(県立沼津工業高等学校建築科2年)
 長谷川友梨(県立科学技術高等学校建築デザイン科1年)
 吉岡祐太朗(県立科学技術高等学校建築デザイン科1年)
 福嶋 稔也(県立掛川工業高等学校情報技術科2年)

努 力 賞
 田代 光佐(県立沼津工業高等学校建築科2年)
 山田 匠平(県立沼津工業高等学校建築科2年)
 遠藤 花佳(県立科学技術高等学校建築デザイン科2年)
 久保田拓也(県立科学技術高等学校建築デザイン科2年)
 深沢 祐貴(県立科学技術高等学校都市工学科3年)
 森  舜一(県立科学技術高等学校都市工学科3年)
 岩崎 哲也(県立島田工業高等学校都市工学科3年)
 萬年 応喜(県立島田工業高等学校都市工学科3年)
 増田 尊紀(県立島田工業高等学校都市工学科2年)
 松下 香里(県立島田工業高等学校建築科2年)
 粟國那奈子(県立浜松工業高等学校建築科1年)
 池野 光彩(県立浜松工業高等学校建築科1年)
 武田 祐太(県立浜松工業高等学校建築科1年)
 松本 澪奈(県立浜松工業高等学校建築科1年)
 山本 郁生(県立浜松工業高等学校建築科1年)

感 謝 状
 静岡県立沼津工業高等学校
 静岡県立科学技術高等学校
 静岡県立島田工業高等学校
 静岡県立浜松工業高等学校

静岡県知事賞受賞作品(全文掲載)

(一社)静岡県建設業協会 第33回建設論文 静岡県知事賞受賞作品

一般社団法人静岡県建設業協会 第33回建設論文

<テーマ>私の街の未来をつくる
 静岡県知事賞
 『麻機文化直売所を用いた街の未来計画』
静岡県立科学技術高等学校
建築デザイン科

 浅井 英光 さん

1.はじめに
 現在静岡市には、代表的な産業であるお茶産業の低迷(図1)や、全国的にも問題となっている少子高齢化(図2)などの問題がある。私の住む麻機遊水地周辺では、静岡市と同様の問題に加え、農業の衰退、洪水問題、伝統の風化、ゴミの不法投棄などの問題も見られる。私は、慣れ親しんだこの地域の未来を、良いものにしていきたいという思いから、麻機遊水地及び周辺地域を対象に麻機文化直売所を提案し、街の未来計画を提案する。


図1 静岡市茶関連指標の推移

図2 静岡市将来推計人口の推移

2.麻機遊水地及び周辺地域の特徴
 本計画地(図3)はJR静岡駅を北に約5kmと、中心市街地から近い場所に位置している。麻機遊水地周辺には、静岡流通センター、静岡ヘリポート、小中学校などがあり、静清バイパス、新東名高速道路などの交通環境も整っている。麻機遊水地には、約600種の植物、サギ類や水鳥などの野鳥は200種を超え、貴重な動植物が数多く生息している。この地域では、麻機蓮根が有名であり静岡のみならず東京などでも高級食材として取引されている。以上を踏まえ麻機遊水地特有の自然を活かした計画を考えたい。


図3 計画地及び周辺地図

3.計画目的
 この地域には農業の衰退、洪水問題、伝統の風化、ゴミの不法投棄といった問題がある。それらの問題に対し、現在麻機遊水地では洪水緩和対策の工事が進められており、洪水問題は少しずつ緩和されてきた。しかしながら、この地域におけるその他の問題は解決されていない。また、東日本大震災を受け、住民たちの防災への関心が高まっており、災害時の対策も求められている。以上をふまえ、この地域に最適な問題解決を目指すこととした。

4.計画内容
4-1.麻機遊水地事業に伴う街の未来計画
 現在麻機遊水地では、第2~5工区に分けられ洪水緩和工事が進められている。それぞれ新たに公園計画や生物観察用水路などの計画があるが、第2工区は治水、中学校部活用グラウンド、農地の利用以外には、まだ計画されていない。このことから、第2工区を本計画地として選択する。
 この地域では昔から、麻機蓮根栽培(図4)や柴揚げ漁(図5)が行われてきた。しかしながら、担い手不足や農地減少などにより、麻機蓮根の生産量は減少傾向にある。柴揚げ漁に至っては、最近になって復活したものの、その存在を知らない人もまだ多い。そこで、子ども達や職に就けず困っている人達、商品の購入者に、栽培や漁を体験してもらい興味関心を高めることで新たな農業者の獲得を目指したい。そのため麻機蓮根栽培と柴揚げ漁を行える場と、麻機遊水地の自然を伝える博物館を提案する。これらの活動に子ども達が参加することで、栽培方法や調理方法を知り、伝統の風化を食い止めることができると考えた。また近年、ゴミの不法投棄が問題となっている。遊水地の自然を守り、農地の保護をするためには遊水地の美化が必要となる。そこで、美化活動の拠点となる機能を持たせたい。以上をふまえ、麻機蓮根栽培体験、柴揚げ漁体験、遊水地の自然展示、遊水地の美化活動の四つを行う施設を「麻機文化直売所」と名づけ、提案する。

図4 麻機蓮根 図5 柴揚げ漁

4-2.麻機文化直売所計画
 麻機文化直売所(図6)では、麻機蓮根栽培体験、柴揚げ漁体験、遊水地の自然展示、遊水地の美化活動の四つを行う。一つ目の麻機蓮根栽培体験では、栽培方法を農家の方から教わり、農家と子ども達が育てる。蓮根は店頭に並んだ商品を購入するだけでなく、購入者が麻機蓮根の収穫を体験することができ、その場で調理して食べることができる形式にする。二つ目の柴揚げ漁体験も同様に購入者が自ら漁を体験し、その場で調理することができる形式で行う。三つ目の遊水地の自然展示では、問題となっている外来種や、麻機遊水地固有の生物を展示、紹介する。外来種の繁殖を止めることで、農地の保護をしたい。四つ目の遊水地の美化活動は、遊水地の自然、農地の保護を目的とする。子ども達や近隣住民からボランティアを募り、定期的に遊水地のゴミを拾う。麻機文化直売所は、一年を通してこの地域の文化を子ども達や近隣住民が多くの人に発信していく拠点となるようにしたい。


図6 麻機文化直売所イメージ

4-3.災害時計画
 静岡市では、南海トラフ巨大地震が起こると予想され、災害時の対策が急がれている。この地震により、麻機遊水地周辺では液状化が予想されており、この地域に適した対策を考えていきたい。

4-3-1.洪水時計画
 蓮根畑は、現在の利用方法である治水地として利用する。麻機文化直売所は、蓮根畑よりも高所に建て急な大雨にも対応できる様に建設する。食料の備蓄を行い、短期間の避難所としての利用も可能にする。また、静岡ヘリポートが近くにあり、ヘリでの救助、食料の運搬も可能にするため屋上にヘリポートを設ける。

4-3-2.震災時計画
 麻機遊水地周辺では大規模な液状化が予想されている。そのため長期間避難所として利用することは、できないと考えられる。そのためこの施設は食料庫として利用する。陸からの運搬ができない場合は、ヘリを利用し、流通センターに食料を流すことで食料配給を円滑化させる。

4-4.周辺地域の活用
 麻機文化直売所で採れた麻機蓮根、魚の一部を流通センターに流す。これにより多くの人に地場産業を知ってもらい、需要を高めることで、流通センターの活性化を目指す。蓮根収穫後半には、周辺学校の子ども達で、収穫する。収穫した蓮根は、学校給食として消化し、生産の無駄をなくす。また、普段から周辺地域との連携(図7)を取る事で災害時の対応をスムーズに行える環境にしていく。


図7 周辺地域連携イメージ

5.おわりに
 今回私の街の未来について麻機地区を対象に麻機文化直売所を提案した。この提案を通して、伝統文化に目を向けることで、住民が真に望む街にすることができるのではないかと感じた。また、少子高齢化社会の今だからこそ、学生が積極的に地域の事に関心を持たなければ、街の未来は良い方向に向かわないと痛感した。今回の計画だけでなく、これからも自分の学んだことを活かして良い街になるよう、考えていきたい。

6.参考文献
静岡市ホームページ‐自然の宝庫‐麻機遊水地巴川水系河川整備基本方針(案)
事業地紹介[巴川流域麻機遊水地自然再生協議会]
平成一九年三月巴川流域麻機遊水地自然再生協議会‐国土交通省
日本大学理工学部‐学術講演会論文集
静岡市「静岡市の将来推計人口」(平成20年)
静岡農林統計情報協会「静岡農林水産統計年報 農林編」