掛川城再考

西武デパートが2013年1月末で営業終了することが決まるなど、明るい話題が少ない沼津市。しかし、昨年12月に新名所が誕生しました。この9月1日に来館者20万人を達成した「沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム」です。今回のわが街ウオッチングは、シーラカンスや、深海魚を集めた国内でもユニークなこの水族館を紹介します。

自慢できる観光名所に

沼津駅から車で10分足らずで沼津港の入口に到着しました。水族館はどこにあるのかな、と見れば、提灯(ちょうちん)を並べ、「港八十三番地」という額を掲げたゲートの奥、回転寿司屋と浜焼きのお店の奥に、魚の形のレリーフを貼り付けた建物が見えました。

「あれだ!」「あれ?」ちょっと不思議な感じがしますが、そもそも、この「港八十三番地」は、100年続く老舗の佐政水産鰍フ土地でした。

「もっと地元の人が喜んでもらえるような安くて美味しい飲食店モールを作りたい。また沼津の人が自慢できるような観光名所を作りたい。そのような思いから港八十三番地と、他にどこにもないような水族館を始めました」と、同社専務取締役で水族館オーナーの佐藤慎一郎さん。

水族館は全国各地に数多くある中で、「ここ沼津にしかないもの」は何だろうか。目の前に広がる最深2500メートルという深い深い駿河湾を「目玉にしよう」と、深海をテーマにした水族館にしたそうです。

人脈にも恵まれました。館長は、世界中の水族館に魚を納入している三島市にある会社、(有)ブルーコーナーの代表取締役、石垣幸二さん(「情熱大陸」などテレビにも取り上げられている著名人)が務め、「石垣さんがやるなら」と賛同してくれた安永正さん(東京・池袋のサンシャイン水族館の元館長)が副館長…、その他にもさまざまなプロたちが盛り上げているということです。石垣さんの会社は世界27ヶ国の水族館に日本や世界中の魚を納品しています。

「港八十三番地」入口 奥に水族館が見える 沼津を自慢できるふるさとにしたいと話す佐藤さん
▲「港八十三番地」入口 奥に水族館が見える
▲沼津を自慢できるふるさとにしたいと話す佐藤さん

20万人達成は予想通り

さあ、そろそろ入館してみましょう。

入口には「祝 20万人達成!!」と掲げてあります。この9月1日に千葉県から訪れたご家族が20万人目となって、記念品が贈られています。昨年12月のオープンですから、かなり早いペースではないでしょうか。

オーナーの佐藤さんは次のように話しています。

「初年度25万人を目標にしていましたので、予想通りです。ほとんどが個人のお客様で団体はまだまだ少ないため、来年度以降は団体の誘致に力をいれていきたいと思います。」

水族館入口に掲げられた「20万人達成」 佐藤さん(右)にお話をうかがう 左は林委員
▲水族館入口に掲げられた「20万人達成」
▲佐藤さん(右)にお話をうかがう 左は林委員

深海は見えないから面白い

チケットカウンターを通り過ぎると、もう「海の底」。何やらヌルヌルした感じの“海の掃除機”ダイオウグソクムシ、めしべが並んでいるようなきれいなヒメカンテンナマコなどが迎えてくれます。ベニテグリ、ツノハリセンボン…、聞いたこともない生き物たちが次々と現れます。

深海の生き物たちがいるコーナー 駿河湾の水槽に、思わず「おいしそう」
▲深海の生き物たちがいるコーナー
 写真提供:沼津港深海水族館
▲駿河湾の水槽に、思わず「おいしそう」

突き当たりの右側には色鮮やかなお面?が飾られています。よく見ると、お面ではありません。「駿河湾」のコーナーで、タカアシガニの甲羅に彩色したものでした。

タカアシガニの遊ぶ水槽の前には夏限定イベント「世界最大のカニはどっちだ!?」と題して、タカアシガニとタスマニアキングクラブの剥製(はくせい)が向かい合って対決しています。静岡県民としては、タカアシガニを応援したくなるではありませんか。(しかし、どちらが美味しいかな。)

カニの甲羅のお面がいっぱい この夏限定の展示「世界最大のカニはどっちだ」
▲カニの甲羅のお面がいっぱい
▲この夏限定の展示「世界最大のカニはどっちだ」
▲迫力があるタスマニアクラブ

その奥には、再び深海の生き物たち。サケビクニン、キホウボウ、ミドリフサアンコウ、サギフエ、ヤマトトックリウミグモ…。まったく知らない、見たこともない魚?たちがいます。

「深海は、見えないから面白い。」という水族館のキャッチフレーズの通りです。

水族館には、深海の生き物が150種2000匹いるとのこと。リピーターの人も楽しめるように、石垣館長のネットワークを活かして「オープンから7割以上が入れ替わっている」(佐藤さん)そうです。また、地元の漁師さんが捕獲してきた駿河湾の珍しい深海魚が、当日中に届くため、“鮮度”は抜群とも。これも他の水族館にはマネできないところです。

深海ナマコ 写真提供:沼津港深海水族館 オウムガイ 写真提供:沼津港深海水族館
▲深海ナマコ 写真提供:沼津港深海水族館
▲オウムガイ 写真提供:沼津港深海水族館
サギフエ 写真提供:沼津港深海水族館 ミドリフサアンコウ 写真提供:沼津港深海水族館
▲サギフエ 写真提供:沼津港深海水族館
▲ミドリフサアンコウ 写真提供:沼津港深海水族館

シーラカンスが5体も

2階に行きましょう。と、その前に、階段の踊り場の水槽には、ことし8月15日に保護した赤ちゃんアカウミガメがひらひら泳いでいます。名前を募集した結果、「たびちゃん」に決まったということが報告されていました。

赤ちゃん海ガメがいました
▲赤ちゃん海ガメがいました

階段を上ると、シーラカンス・ミュージアムです。まず、アフリカのコロモ諸島でのシーラカンス調査を再現したコーナーがあります。

実際に捕獲に使ったカヌー、シーラカンスの剥製が泳ぐ海、スプリングのような釣り用の錘(おもり)が置かれています。毒グモやら肺魚、電気ナマズなど、近寄ってもほしくないし、決して触りたくもない不思議な生き物も展示されています。

偉大な発見は、こうした自然の脅威、危険の下で成し遂げられたのだなあと、あらためて感じ入るのです。

▲シーラカンスの調査に実際に使用された舟
▲釣りの錘(おもり)

このコーナーを抜けると、部屋の真ん中に立つ特殊なガラスケースの中には、冷凍保存のシーラカンスが2体あります。

ケースを囲む壁には、生物の進化の軌跡や、シーラカンスの発見の秘話をビジュアルな形で解説・紹介。映像コーナーでは世界で初めて撮影されたシーラカンスの泳ぐ映像の放映、シーラカンスのクイズもあります。

さらに、シーラカンスの剥製が1体、大きな口を開けています。これが一番近くでじっくり見られるシーラカンスでしょうか。その隣には、CTスキャンによるシーラカンスの骨格も展示しています。

▲シーラカンス発見の物語も展示されています
▲大きな口を開けたシーラカンス
▲お土産のお菓子もシーラカンス

なぜか、この部屋の奥には「ハリモグラ」がいました(シーラカンスと同じように、進化の過程を示す生物として展示されているのです)。ニューギニア島から来たハリモグラは、哺乳類なのに卵を産む珍しい生物だそうです(そういう生物は、このほかにカモノハシだけ)。くるっと丸まっていて、ハリだらけの背中しか見られませんでした。どんな顔をしているのかな。

大急ぎで回りましたので、水族館の魅力を全部お伝えはできませんでした。美味しい魚を食べられるお店もたくさんあります。ぜひ、沼津港とこの水族館に一度訪れてみてはいかがでしょうか。

回転寿司のお店 浜焼きのお店
▲回転寿司のお店
▲浜焼きのお店

もっと沼津港にお客様を

最後に、オーナーの佐藤さんに再び登場いただきます。佐藤さんは、「港八十三番地では寿司・海鮮丼・天ぷら・浜焼き・バーガーなどいろいろな料理で沼津港の魚介類を楽しめます。またお土産店やカフェなどもあります。今度はイベントや催事も増やしていき、沼津港を活性化していきたいと考えています。沼津港には年間約130万人の観光客が訪れていますが、これは決して多くはありません。沼津港を大きく成長させ、また静岡県東部地区のネットワーク化を進めることなどで、200万人、300万人とふやしていければ、と思います」

食べたかったよー 写真提供:沼津港深海水族館
▲食べたかったよー 写真提供:沼津港深海水族館
シーラカンス?
▲シーラカンス?
深海魚バーガー どんな味だろうか
▲深海魚バーガー どんな味だろうか

≪沼津港深海水族館≫

◎営業時間

  • 10:00〜18:00(7月中旬から8月31日は19:00まで)
    ※最終入館は閉館30分前まで。
  • 年中無休(保守点検のため臨時休業の場合あり)

◎入場料金

  • 大人(高校生以上)1,600円  こども(小・中学生)800円  
    幼児(4才以上)400円 団体割引(20名以上)<当日可>

◎問い合わせ先

  • 電話055-954-0606(平日10:00〜18:00)

◎アクセス

  • 電車で東海道新幹線「三島駅」よりJR東海道線に乗り換え(5分)JR東海道線「沼津駅」南口より(1)バスで約15分「沼津港」下車(2)タクシーで約5分〜10分
  • 車で東名沼津ICより約20〜30分新東名長泉沼津ICより沼津方面に出て約20〜30分

◎所在地