ズームアップインタビュー 高速道路が未来を開く~祝・開通 新東名県内区間162キロ~NEXCO中日本東京支社建設事業部長の源島良一さんにインタビュー

新東名高速道路の静岡県区間延長162キロが4月14日午後3時に開通しました。待ちに待った開通です。静岡県の発展にとどまらず、日本全体の社会経済活動の活性化に大きな役割を果たしてくれるよう期待をしています。そこで今回は、新東名の特徴などを中日本高速道路(株)(NEXCO中日本)東京支社建設事業部部長の源島良一(げじま・りょういち)さんにインタビューしました。皆さんはもう新東名をドライブしましたか。源島さんのお話をうかがってから、またドライブしたら新しい発見があるはずです。(聞き手は総務・広報委員会の原廣太郎委員長、川島達也委員、名倉啓司特別委員)

=新東名の写真は全てNEXCO中日本の提供です=

源島建設事業部部長(中央)、を囲んで総務・広報委員会 原廣太郎委員長(右)、川島達也委員(左)
▲源島建設事業部部長(中央)、を囲んで
総務・広報委員会 原廣太郎委員長(右)、川島達也委員(左)
 
源島良一中日本高速道路(株)建設事業部部長
▲源島良一 
中日本高速道路(株)
建設事業部部長

高速道路史上最長の開通距離162キロ

委員 まず、新東名の概要を教えてください。


源島部長新東名高速道路は新名神高速道路と共に、東京と名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶ新たなネットワークとして計画されたものです。延長は330キロメートルで、現在の東名・名神とダブルネットワークを形成することになり、今後のわが国の社会・経済活動を支える枢要なネットワークになるものと期待をしています。
昭和62年に策定された第4次全国総合開発計画(4全総)の中で、全国で1万4000キロメートルの高規格幹線道路ネットワークが位置付けられ、新東名も盛り込まれたものです。
現在、NEXCO中日本で神奈川県海老名市(海老名南ジャンクション)から愛知県豊田市(豊田東ジャンクション)までの区間の建設を鋭意進めています。
このうち、御殿場ジャンクションから三ケ日ジャンクションまでの間、我が国の高速道路の整備の歴史の中で、一度の開通延長としては、史上最長となります162キロメートルが、おかげ様で開通を迎えることができました。
この道路は、東名と相互に連絡するとともに、東側から圏央道(首都圏中央連絡自動車道)、伊豆縦貫自動車道、中部横断自動車道、それから三遠南信自動車道、一番西側の東海環状自動車道とネットワークを形成し、一体となって、この地域全体の交通を支えるものです。


御殿場JCT
▲御殿場JCT

全線開通は2020年

委員 静岡県区間の開通の先はどうなっていますか。


源島部長 次に事業が進んでいるのは、浜松いなさジャンクションから豊田東ジャンクションです。用地買収は99%、工事が最盛期を迎えつつあります。平成26(2014)年度の開通を目指しています。

新富士川橋
▲新富士川橋

それから神奈川県内の海老名南ジャンクションから伊勢原北インターチェンジの区間では、用地買収を進めており、一部先行して工事にも着手しています。伊勢原北インターチェンジから秦野インターチェンジの区間は、用地買収に入っています。秦野インターチェンジから御殿場ジャンクションまでの区間はこれから用地買収という段階で、この区間は平成32(2020)年度の完成を目指しています。
これから10年くらいの間に全線を供用させていく計画です。


委員早く東西をつなげたいものですね。さて、あらためて新東名の特徴を教えてください。


新・旧行き来自由なダブルネットワーク

源島部長まずは、ダブルネットワークを実現したということです。単純にバイパスをつくったということではなくて、東名と行き来ができるということが大きな特徴だと思っています。
御殿場ジャンクションでは新東名と東名が直接交差し、新清水ジャンクションと清水ジャンクション、浜松いなさジャンクションと三ケ日ジャンクションでは、東名と4車線の高速道路でお互いを結んでいますので、相互に行き来できます。従って、どちらかの道路に何かあっても、一方を使うことができるのです。

清水いはらJCT
▲清水いはらJCT

それから道路そのものの特徴としては、東名と比べてカーブやこう配(線形)が緩やかになっています。
東名の最小半径が300メートルですが、今回の開通区間の新東名は3000メートルになっています。また、坂道も東名の最大勾配が5%対して新東名は2%です。より安全で快適にドライブしていただけるのではないでしょうか。アクセルをあまり踏まなくても走ることができますので、燃費も良くなって、エコなドライブができると思っています。


橋・トンネルが6割を占める?

また、新東名は東名より山側を走っていますので、橋やトンネルが多いという特徴があります。全体延長に対する橋やトンネルの延長の割合は、東名が20%ですが、新東名の開通区間では60%なのです。安全と品質を確保しつつ、環境保全に配慮しながら、コストを下げるために、新しい技術や工法を使って建設してきたということも特徴といえます。


清水JCTと新清水JCT
▲清水JCTと新清水JCT

個性的なSA・PA

それから今回、インターチェンジが10カ所同時オープンしました。またパーキングエリア(PA)、サービスエリア(SA)が上下線カウントで13カ所オープンしました。PA、SAは、一般道路側にも「ぷらっとパーク」という駐車場があり、高速道路のドライバーだけでなく、地域の皆様にも一般道から活用できるようにしています。
これらのPA、SAは、皆様にできるだけ使いやすい施設にすること、環境への影響ができるだけ少ない施設にすること--という施設の設計方針を共通項として持っています。同時に、個性も持たせようということで、それぞれの施設ごとに特徴を出しています。例えば、駿河沼津SAは、温暖な気候で駿河湾がよく見える所にありますので、「リゾートマインド」というコンセプトに基づいて施設を造っています。上り線は地中海の港町を思わせる外観デザイン、下り線は眼下に広がる海をモチーフにしたデザインとしています。
13カ所のうち、駿河沼津SA、清水PA、静岡SA、浜松SAについては、「NEOPASA(ネオパーサ)」という新しいブランド名を付けましたので、ぜひ、覚えていただけたらと思います。
地元の新鮮な食材や名物も提供させていただくとともに、高速道路としては初めて登場するお店もあります。
単に通過するだけではなく、ここを一つの目的地として皆様に楽しんでいただければ、と思っています。
一方で、先の東日本大震災の経験を踏まえまして、SA、PAにはヘリポートを併設しています。非常用電源、食料備蓄といった用意もあります。いざという時には高速道路のお客様だけではなく、地域の皆様の防災拠点としてもお役にたてるよう、引き続き勉強していきたいと思います。


委員宿泊施設はありますか。


源島部長今はありませんが、お客様の声としてあった方がいいということであれば検討することになるでしょう。


駿河湾沼津SA下り
▲駿河湾沼津SA下り

「のぞみ」と「こだま」の関係?

委員新東名がこれだけ魅力的になると、東名がちょっと心配になりますが。


源島部長東名の静岡県内の交通量は1日当たり7万から8万台となっています。恐らくこの半分くらいが新東名に転換するのではないかと予想しています。
東名の約4割が通過交通なのです。そうした車は新東名をご利用されるでしょう。東名は市街地を通っているので、静岡県内に発着地をもつ交通が主になると考えています。たとえて言えば新幹線の「のぞみ」と「こだま」の関係です。新しいネットワークによって全体の交通量はプラスになるとは思いますが、東名のSA、PAにとっては交通量が減る方向ですので大きな課題になります。新東名の施設も楽しんでいただき、東名の施設も楽しんでいただけるように工夫をどのように展開していくかが、たいへん大きなテーマです。開通後のご利用状況を踏まえて検討していきます。


粟ヶ岳トンネル
▲粟ヶ岳トンネル

先端技術がドライバーを支援

都田川橋
▲都田川橋

委員新技術という点での特徴は、どのようなことでしょうか。


源島部長最新の情報通信技術を使って新たなサービスを予定しています。ジャンクションの前には大きな情報板(図形情報版)を設けます。例えば東京から来て御殿場で、東名に行くか新東名に行くかの判断がしやすいように、両方の所要時間を提供します。
また、新東名には1キロピッチでカメラを設置していますので、交通事故や落下物があった場合には、早く捕捉して状況確認ができるようにしています。これによってタイムリーな情報を提供します。
トンネルが多いのが特徴とお話ししましたが、トンネル内の照明についても新しい技術を採用しています。従来は真下を照らしていましたが、新東名では前方を照らしますので、クリアに前方が見え、より安全に走行ができるものと期待しています。これは「プロビーム」といいます。


高速道路本来の機能発揮へ

委員新東名の地域経済への効果について、どのようにお考えでしょうか。


源島部長御殿場以西の東名は、道路の設計上の交通容量を4万8000台としています。従って現在はパンクした状態といえ、渋滞が多く発生しています。新東名の開通によって、長距離交通を主体に新東名に転換すると思われますので、東名の恒常的な渋滞が大きく改善されると期待しています。かなり減るのではないでしょうか。
高速道路の本来の機能である高速性と定時性が確保されるようになります。

ダブルネットワークの形成が今後の社会・経済活動の枢要なネットワークになっていくと源島さん
▲ダブルネットワークの形成が今後の社会・経済活動の
枢要なネットワークになっていくと源島さん

もう一つは、先ほどもお話ししましたダブルネットワークです。東海地震、津波といった時に、新東名と東名のどちらかが通行可能であれば東西の交通を確保できます。災害への備えが大きく高まるでしょう。実は、東日本大震災の際も大津波警報が発令され、東名は清水-富士間が通行止めとなりました。西から被災地に向かう消防車両などが来ていたので、新東名の工事中の区間を通ってもらいました。台数として470台くらいになります。あらためてダブルネットワークとなることで優位性、信頼性が高まるのだということを実感しました。
それから、新東名は東名と比べて距離が短くなるので、東京、名古屋、大阪・神戸の3大都市圏が近くなり、交流が活発化し、日本の経済活動に大きく貢献するのではないかと考えます。大動脈としての機能を最大限に発揮してほしいと期待しています。そういう意味で、地域の経済だけではなく、日本全体の経済、社会活動にとって大きな効果があるのではないかと思っています。


高まる内陸部のポテンシャル

委員新東名によってどのような未来像が描かれるとお思いですか。


源島部長これからのネットワークを考えるのには二つの大きなポイントがあると思います。
一つは人口減少。人口が減っていく中で、国全体の活性化をどのようにしていくのか。地域の生活のためのサービスをどう守っていくのか。そのために高速道路をどう役立てていくのかを考えなければなりません。

浜松いなさJCT
▲浜松いなさJCT

もう一つは、わが国の国土は自然災害が多くぜい弱ですから、安全な国土にするためにネットワークをつくっていくことが重要だと思います。
そうした中で、ネットワーク整備という観点で力を入れていかなくてはならないのは、日本の経済活動の原動力である大都市の環状道路ですとか、ボトルネックの解消です。 また、道路はつながってこそ機能が発揮されるのですから、早くつなげること、「ミッシリングの解消」といっていますが、そういうことを重点的にやっていかなくてはなりません。
静岡県では、川勝平太知事がよく仰っていますが、私も新東名によって内陸部の活用ができるのではないかと思っています。静岡県の幹線交通網を歴史的に見ますと、古代の東海道、江戸時代の東海道、国道1号、東名高速道路、東海道本線、新幹線などは、太平洋沿岸を通ってきました。新東名はそれより内陸部を通っており、今まで交通の面で必ずしも恩恵を十分に受けられなかった所のポテンシャルがあがりますので、それをうまく活用して、地域の活性化につなげていくことが重要だと思います。


現東名の老朽化対策が今後本格化

委員最後に新東名によってダブルネットワークが実現したことから、東名の本格的な老朽化対策ができるようになったということだと思いますが、いかがでしょうか。


源島部長これまでも集中工事をしてきましたが、このやり方では時間的に制約され、工事の内容やボリュームに限界があります。東名は全通後40年以上が経過し、橋や舗装をより抜本的に改修をしていくことで長持ちさせることができます。新東名を活用しながら、工事の時間をより長く取ることができるようになりますので、これから取り組んでいきたいと考えています。現在、保全部門で計画を立てているところです。
最後になりましたが、静岡県建設業協会の皆様には、新東名の建設事業の最初の工事用道路の施工段階から、何かとおせわになってきました。おかげさまで無事開通を迎えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。引き続き、弊社の事業へのご理解、ご協力をお願い申し上げます。


▲TOP