地域の建設業は、地域経済を支える基幹産業として、良質な社会資本整備の提供と雇用の維持・確保はもとより、災害時における応急復旧活動、河川・道路等の清掃活動、各種のふれあい活動による地域住民との交流など、さまざまな社会貢献活動を実践している。

  昨年、創立90周年を迎えた清水建設業協会(上條紀英会長)では、「地域社会に何ができるかを考え、地域の安全・安心を守る立場で先頭に立ってやっていく」姿勢の下、90周年記念事業の一環として“地域あんしん住まい応援隊”を創設、高齢者世帯を対象に無償で手すりの設置などボランティア活動を開始した。急速に高齢化が進む社会に、地域建設業がその持てる技術で貢献する取り組みは、市民の注目を集めるとともに、業界にとっても地域に生きる建設業の今後の方向性を示唆する。
  今回、静岡市社会福祉協議会事務局次長で、清水区地域福祉推進センターの小林小五郎センター長と、静岡県建設業協会総務・広報部会の原廣太郎委員長、杉本金市広報委員(清水建設業協会副会長)、清水建設業協会総務委員会の加藤直樹委員長、清水建設業協会の内藤樹事務局長が、“地域あんしん住まい応援隊”の活動開始の経緯と今後の展開について話し合った。

高齢者の世帯が過半数を超えるような高齢化社会を迎えたこの時期に、長い年月、地域社会の皆様に育てられた清水建設業協会として、地域に役立つボランティアを−と事務局で情報収集から始めました。
高齢者世帯では電球一つ換えるのも大変で、どこへ頼んでよいのかわからない不安感があります。「建築の日ボランティア活動」として、高齢者や障害者の住宅を対象とした家屋補修のボランティアに取り組んでいる熊本県建設業協会の例も参考に、家屋補修の対象について屋根や網戸、ガラスなどは除外、原材料1、2万円でできるものとしました。
何しろ初めての取り組みですから、どういった手法で、必要とする高齢世帯とどうつなげるかが課題でした。清水社会福祉協議会を通じて趣旨を説明し、各地区の民生委員(約400人)の協力を得て調査してもらい、今回、9件の申請から7件の工事を実施しました。
民生委員は皆さんご存知のように、非常に幅広い仕事をやっているわけですが、今回のお話をいただいた当初は、「果たしてそんなにうまい話があるのか」という感じでした。高齢者を狙った振り込め詐欺などの事件が続いている社会情勢ですからね。またプライバシーなど難しい問題もあります。今回は7件ですが、口コミで広がればかなり要望が出てくると思います。
確かに協会として予算は限られてますが、困っている方に労働奉仕する地道な活動を続けることで、建設業や協会が広く理解され、昨今の建設業界全般に対する世間の目も変わるのでは、と考えています。
1人住まいの高齢世帯が増え、不便を抱えておられるお年寄りに、少しでも業界として役立てれば幸いです。また介護事業と称して、一部の悪徳業者がとんでもない見積もりで高齢者世帯にリフォーム営業していることを排除し、われわれがしっかりとした仕事を地域で行うことで、将来的には信頼を培い、地元業界の仕事につながるのではないかと考えます。
高齢者が21%を超えると超高齢化といわれますが、既に清水区はその超高齢化になっています。今後、65歳以上のお年寄りの1人住まいは増える一方です。清水建設業協会の今回の活動は、まさに時宜を得たすばらしい事業だと思います。9月12日の出発式では、皆さんしっかり整列され、迎える方も安心されたのではないでしょうか。清水はコミュニティがしっかりしたまちです。それぞれの地区でこの活動が広がればと考えています。
これまで協会というと、役所とのつながりが中心で、一般市民とのつながりが薄いという面があります私自身、民生委員の経験があるのですが、新しい分野として今回の取り組みを広く他の協会へもアピールしていくべきではないでしょうか。
われわれ地域の建設業協会は、まじめな会社の集まりであり、その地道な活動を取り上げてもらえば幸いです。業界は人情家が多いですから、良いことをアピールして少しでも建設業界が明るくなればと思います。
こうして建設業協会と意見を交わしながら、気心を通ずることでより良い提案ができるかたちになると思います。地域の活動として心強く、今後ともよろしくお願いします。
【地域あんしん住まい応援隊】

 清水建設業協会(加入54社)が創立90周年記念事業として創立。1人暮らしの高齢者の住まいを対象に、安全で快適に過ごしてもらうためのボランティアとして、無償で簡単なスロープ、玄関、階段、風呂場の手すり取り付け、障子やふすまなどの建具調整などの労働奉仕を行う。初年度となった2008年9月12日には手すり取り付け5件、段差解消1件、耐震器具取り付け1件の7件を実施。今後も毎年1回、9月15日の「敬老の日」にちなんで実施していく。